ごあいさつ

教授 波呂浩孝

教授
波呂 浩孝

 

 山梨大学整形外科講座は1983年4月1日に初代教授赤松功也先生が就任され開講されました。1999年7月1日には、浜田良機教授が第2代教授に就任され、発展を遂げました。2009年10月1日に私が第3代教授に就任させていただきました。

 日本人の平均寿命は女性87歳、男性81歳と毎年更新を続けていますが、元気に自立して過ごすことができる健康寿命は74.8歳であり、これらに乖離があります。この乖離の原因に、運動器の障害が重要な一因となっています。移動機能が低下し進行すると、介護の必要が高くなり、この状態をロコモティブシンドローム(ロコモ)といいます。本邦では40歳以上の68%が罹患しているという報告があります。健康に生活できる期間を延伸するためには、整形外科が果たす役割は極めて大きいといえます。整形外科は小児から高齢者まで、先天性や外傷、加齢性疾患などに対し、脊椎・関節・手外科・骨軟部腫瘍・小児整形・外傷(スポーツ含)・リハビリテーションの領域に分けて診療を行います。外科と標榜されていますが、すぐに手術をするわけではなく、内科的治療の後、必要があれば外科的治療を行い、その後、リハビリテーションを行います。当院は再整備が行われていますが、2016年には手術室が改築され、整形外科は高度清潔区域(バイオクリーンルーム)で手術を実施しています。また、O-armナビゲーションシステムと神経モニタリングを使用した脊椎脊髄手術や、高性能顕微鏡やエコーを利用した手術が実施され、難治疾患に対して最先端機器を使用した安全な手術を行っています。今後、リハビリテーション室を改築し、患者さんの充実した機能回復を目指します。

 また、教育を行うことは重要な使命です。若手医師は専攻医1年目からマンツーマンで診断、治療の指導を受け、手術の習得も目指します。学術活動は研修開始1年目から開始し、学会発表や論文投稿を行います。これまでに整形外科専門医試験は総て一発合格です。専門医取得後は、マンモス講座ではできないオーダーメイドの研修を行います。このため、他大学や海外への留学の経験者が多いです。また、出産や育児の時期には、十分配慮した研修や勤務が行えます。さらに、当院は厚生労働省による『実践的な手術手技向上研修事業』に採択され、解剖学講座のご協力により手術トレーニングが実施できるようになりました。2021年秋から講習を開始します。

 研究は重要な課題です。すでに、成人脊柱変形の臨床研究や椎間板ヘルニアの椎間板内注入療法の開発、こどもの健康と環境に関する全国調査(エコチル)、昭和町と協力して実施しているロコモ予防検診事業が稼働しています。また、放射線科と共同したMRI研究、耳鼻咽喉科と協力した嚥下研究、内科と共同のリウマチ研究、などの共同研究や、悪性骨軟部腫瘍や椎間板をテーマにした基礎研究も行われています。これらは、他大学との研究も含まれています。2020年には37英語論文が採択されました。

 山梨県でもCOVID-19感染症による患者さんが増加し、現在1,380人を超えました。当院でも地域に貢献するため診療、ワクチン接種の対応を行っております。コロナ禍の中ではありますが、健康に十分配慮して、臨床、教育、研究に尽力していきます。

山梨大学整形外科の目標

  1. 患者さん中心の地域医療の実践
  2. 国内外に通用する整形外科専門医の育成
  3. 臨床上の問題点や限界を打破する研究